共同浴場「大湯」~別所温泉外湯の一つ。葵の湯のいわれとは?

共同浴場である石湯・大師湯・外湯の中でも唯一の露天風呂が楽しめる温泉。
語り継がれる歴史も多く、外湯めぐりには欠かせないスポットです。
そんな大湯の歴史について紹介します。

■大湯とは

石湯・大師湯から少し離れた場所にある「大湯」。
立派な三層の瓦屋根が特徴で、その佇まいからは寺社のような雰囲気がかもしだされます。
大湯の前にある石碑には「葵の湯」と書かれ、木曾義仲ゆかりの湯として知られています。
これは木曾義仲(源義仲)が愛妾である”葵の御前”と入浴していたエピソードから、「葵の湯」の別称がつけられたそうです。

別所温泉には大湯を含めて3つの外湯がありますが、ここは唯一露天風呂が併設。
大量に湧き出るその豊富な湯量から「大湯」と名づけられ、別所温泉の源泉がいかに豊富に湧き出ているかが感じられます。

その名称の通り湯船からはザブザブとお湯が溢れ出て、薄い緑色をしたまろやかな硫黄泉の香りが立ち込めた昔ながらの温泉です。
男湯・女湯ともに露天風呂がありますので、開放感を感じながらゆっくり浸かるのもおすすめ。

泉質は単純硫黄泉(別所温泉4号泉+大湯の混合泉)加水・加温なし。掛け流しと循環併用です。タオルや石けん、シャンプー、ひげ剃り等は番台で販売しております。

■木曽義仲(源義仲)ゆかりとされる大湯

木曾義仲ゆかりの湯のいわれとして、吉川英治著「新平家物語」に書かれた一節は外せません。
実際「大湯」の前に建立された”葵の湯”の石碑のそばに、「新平家物語」の一節をしたためた石碑が並んでいます。

【葵と義仲】
木曽の冠者義仲は、正月すえから信濃の別所温泉へ療養に来ていた。
彼の陣所、依田はこの別所や上田平などをふくむ塩田ノ庄のすぐ隣り村なのである。
「葵 もうここも飽いたであろ」
「いいえ 飽くどころか、殿とこうして居るならば いつ迄もと願うてをります」…略…
御湯屋は俄ぶしんだが木の香も新しく湯は湯槽をあふれ清々と流れている。
この建物さへ、彼女に療治させるため、義仲が急に命じて造らせたものである…略…
吉川英治著「新平家物語」巻十三より

正月末から別所温泉に療養に来ていた木曾義仲。
義仲は葵の御前に療治させるために大湯を造らせたとあります。
「葵、もうここは飽きたであろう?」
「いいえ、飽きるどころか、殿といつまでもこうして一緒にいたいと思っています。」

この小説から、葵の御前がどれだけ義仲を慕っていたのかが垣間見れますね。
大湯の湯が溢れ出る様子なども描写される「新平家物語」は、映画や大河ドラマで映像化され、小説家・吉川英治にとって大作となりました。

■北条の湯と呼ばれた大湯

北条義政は信濃国塩田壮を領有した塩田北条氏の初代武将。上田市塩田平には今もなお北条氏が守り続けた寺院が多く残ります。
中でも有名なのは、安楽寺にある国宝「八角三重塔」。この場所は毎年多くの方が参詣に訪れる観光名所となっています。
義政は信濃の地に居を構え、憩いの場である大湯の湯小屋も建てたとされています。
そのことから「北条の湯」とも呼ばれていました。

隠れたエピソードが豊富で、今でも多くの観光客の心を惹きつける「大湯」。
昔ながらの形を守り続ける外湯(共同浴場)は、現在も訪れる人達の心と身体を癒す憩いの湯所に変わりありません。

■アクセス

● 名称:別所温泉 大湯
● 所在地:〒386-1431 長野県上田市別所温泉215-1
● 営業時間:6:00~22:00(最終受付21:30)
● 定休日:第1・第3水曜日 
● 入浴料:150円
● アクセス:(1)上田菅平ICから車で30分 
     (2)上田電鉄別所線別所温泉駅下車徒歩15分