北向観音と善光寺の両方に参拝することで、現世と来世の利益を得ることができるとされ、両参りと呼ばれています。
1.片参り・両参りについて
向き合う形で建立されている北向観音と善光寺ですが、その片方のみを参拝することを「片参り」、両方を参拝することを「両参り」と言います。この両参りについて、旅行会社によるツアーが組まれています。また、効率的に両参りするルートを紹介するサイトや、実際に行ってきたレポートを紹介するサイトも存在します。
北向観音の境内にも、「本尊である千手千眼観世音菩薩は、北斗七星が暗闇の中で人々の指標となるように北向きなのであり、現世利益を授けるという霊験がある。南向きに建てられた善光寺と向かい合っており、古くから両方を参拝しなければ、片参りになるといわれている」というような内容の、両参りをすすめる立札があります。「現世の利益を授ける北向観音のご本尊と来世での利益を授ける善光寺のご本尊の両方をお参りましょう」ということです。両参りは人々の間に深く浸透しており、長い歴史を持つこの2つの名刹は切っても切れない関係ということができるでしょう。
2.北向観音と善光寺を両参りする意味・ご利益
北向観音のご本尊は「千手千眼観世音菩薩」という観音菩薩であり、善光寺のご本尊は「一光三尊阿弥陀如来」という阿弥陀如来です。観音菩薩は現世での利益を、阿弥陀如来は極楽浄土という来世での利益を授けてくれる仏様です。一昔前は片参りすることはタブーとされ、現世と来世どちらの幸せも願う人々にとって、両参りすることが当たり前であると考えられていました。
昔ほどではありませんが、その考え方は現代にも引き継がれています。両方を参拝して、観音菩薩に現世利益を、阿弥陀如来に未来往生を願うことで、より良い幸福なご利益にあずかることができるとされており、今なおその風習は続いています。どちらから参るのが正しいなどの順番は決まっていません。日帰りで行きやすい方から両方を参拝するのも良いですし、1泊して観光がてらのんびりと参拝するのも良いでしょう。
3.他にもある両参り
両参りという風習は、北向観音と善光寺という2つの寺院だけではなく、他にもあります。
例えば、神社における両参りとして挙げられるのは、縁結びで知られる出雲大社と五穀豊穣などで知られる美保神社です。出雲大社には「だいこくさま」として知られる大国主大神が御祭神としてまつられており、美保神社にはその妻と子である三穂津姫命と事代主神がまつられています。そのため、この場合は出雲大社から参拝するのが正しいとされています。
また、厄除けや交通安全などで知られる由加神社と、「こんぴらさん」と呼ばれ、海上・交通安全で知られる金毘羅宮も、両参りをおすすめする神社として挙げられます。旅をする人々が本州から四国へ渡るときに、由加神社で交通の安全を願ったことが、江戸時代から現在も続く両参りという風習となりました。