諏訪大社には上社と下社に分かれており、それぞれで行われる御柱祭には、多少の内容の違いがあります。
1.上社・下社とは
諏訪大社には、上社本宮と前宮、下社秋宮と春宮という4つの境内地があります。この4つにはお参りの順番の決まりはなく、格の違いなどもありません。元々は上諏訪神社と下諏訪神社という2つの神社であったため、「上社」「下社」と分かれたのはその名残だと言われています。
2.上社と下社、それぞれの特徴
上社本宮と前宮は御神体を御山(守屋山)とし、御神体の方角の北向きに建てられています。本宮は守屋山の麓にあり、幣拝殿と片拝殿しかなく、本殿がない諏訪造りという様式で建てられており、式年造営御柱大祭の際に遷座が行われる東宝殿と西宝殿は、境内のほぼ真ん中にあります。前宮は、本宮から約1.5キロ離れた諏訪湖の南側に位置します。高台で日当たりも良く、水も豊富なこの場所は、建御名方命が最初に居を構えた諏訪信仰の発祥の地であるとされています。
下社秋宮と春宮は同じ図面をもとにして建てられており、大きさは異なりますが、構造は同じです。御神体は秋宮が一位の木、春宮が杉の木を御神木としています。秋宮は旧中仙道沿いに位置し、交通の便が良く、見どころも多いことから、古くから一番参拝者が多いとされています。特に目を引くのが、重要文化祭である神楽殿にある、最大の直径1.4メートル、長さが約7.5メートル、重さ800キロにもなる大きな注蓮縄です。御手洗川にかかる橋(下馬橋)は下社では最も古く、幣拝殿の欄干の彫刻はたいへん見ごたえがあります。
3.上社と下社における御柱祭の違い
上社と下社の御柱祭の違いでまず挙げられるのは、日程の違いです。上社は山出しが4月2日から4日まで、里曳きが5月3日から5日までであり、下社は山出しが4月8日から10日まで、里曳きが5月14日から16日までとなっています。
上社の山出しは、角のように突き出すという特徴を持つ「めどでこ」に氏子たちが跨って、御幣を振って奮い立たながら、狭い曲がり角の「穴山の大曲」、斜度が27度もある急な坂を下る「木落し」、雪解け水で水温が10度を下回る宮川を渡る「宮川の川越し」などの難所を通過していきます。
下社の山出しは、古来伝わる方法で綱渡神事が執り行われた後、8本の御柱が曳き出されます。先の見通せない大きなカーブの「萩倉の大曲」や、最大傾斜が35度もあり、100メートルも続く斜面を下る「木落し」などの難所を通過し、最終地点まで曳き出します。
上社の里曳きは、「めどでこ」に跨る氏子たちの掛け声とともに、大勢の氏子や観客や見守る中、進んでいきます。その間には花笠踊りや長持ち行列、龍神の舞などが披露され、たいへん華やかです。
下社の里曳きもたいへん華やかです。長持ち行列や騎馬行列、龍神の舞などが披露され、賑やかな中を進みます。総勢100名を超える騎馬行列は、江戸時代に行われた御柱の警護が始まりとされ、見どころの1つです。