御柱祭を支える女性たち

老若男女が一体となる御柱祭

全国のお祭りの中には女人禁制などと決められたものもありますが、諏訪大社の御柱祭は老若男女すべてが一体となってお祭りに参加します。さすがに御柱に乗って急斜面を滑り落ちるのは危険なため子どもや女性などは行いませんが、御柱を諏訪大社まで曳行する里曳きは老若男女が一体となって盛り上げます。騎馬行列や花笠踊りなどを行いながら歩くもので、お祭りのかなり前から練習をして準備を行います。若い人や小さい子どもたちは、最初のうちはお祭りの意味がわからず参加を渋ることもあるようですが、実際に参加してみるとその魅力がわかり、それからは積極的に関わるという声が多くあります。

「女の御柱祭」はこれ

御柱祭の山出しは3日間ありますが、その2日目と3日目は氏子だけでなく御柱が通る御柱街道に住む女性たちが大忙しになります。柱が通る道沿いの家は、柱を曳く氏子たちに料理を振る舞うことになっているからです。これは昔からずっと続けられていることで、「御柱料理」を作り、多い家では1日100人以上をもてなすことがあるといいます。核家族化が進んだ現代では、大人数分の料理なんてどのように作ったら良いのかわからないという人がほとんどですが、この地域の女性たちは代々どんな料理を作って出すかを伝えられていて、愛情たっぷりの料理とおもてなしが受けられます。この振る舞いは、おいしい料理を作って氏子たちを支える、女の御柱祭だとも言われています。

御柱祭の振る舞い料理とは

御柱祭の振る舞い料理で必ず作られるのが「天寄せ」というものです。諏訪では冬の気候を生かした寒天づくりが盛んで、天然の寒天を使った天寄せは欠かせないものとされています。天寄せは寒天に砂糖とひとつまみの塩、食紅(色をつけるため)、そして豆腐など好きな具材を入れて固めたものです。各家庭によって入れる具材は様々ですが、色は春らしい桜色にする家が多いです。他には、大鍋で煮た凍み大根の煮物や諏訪湖で獲れるわかさぎの佃煮などが振る舞われます。この季節の諏訪はまだ寒いことが多いので、おでんや豚汁など、温かいものも大鍋で用意され、大変好評です。これだけの料理を作り、振る舞うのですから準備する女性たちの忙しさは容易に想像できることでしょう。

手作りする家が減りつつある寂しさ

御柱祭がある年の諏訪の人たちは、このお祭りが生活の中心となり、より一層団結力が高まります。ここ最近は、女性も積極的にお祭りに参加する人が増え、振る舞い料理を手作りする機会が減り、お店で注文する家が増えてきました。お店で作ってもらう料理は確かに美しく、味も良いものですが、それぞれの家庭で作られた振る舞い料理も家庭それぞれの味があって良いものです。手作りの振る舞い料理が減っていくのは寂しいことですから、御柱祭と共に手作りの振る舞い料理もずっと受け継がれていって欲しいと地元の女性は願い、伝えていこうと考えています。